紋章
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紋章(もんしょう)とは、個人、組織、団体を特定するため使用されるマークである。家柄を表すものは厳密な規則に従って作成され、分家や縁組などでそのバリエーションが生まれていく。目次 |
西洋の紋章
ヨーロッパでは戦場における個人の識別マークとして、盾に紋様を描くことが行われていたが、これが固定された紋章 (Coat of Arms, Blazon) となるのは、12世紀半ば頃である。その理由の1つとして当時、流行していた馬上槍試合(トーナメント)で兜で顔を隠した個人を明確に識別するために必要とされたことが挙げられる。
紋章は貴族等の領主が代々受け継ぐことにより、家紋の役割を果たすようになり、都市や騎士団などの団体も同様の形式のものを紋章として採用するようになった。なお、領主以外の個人の紋章は領主の紋章をベースとして個人のバリエーションを加えたものになることが多い。紋章は個人を特定するために存在するため、同時期の同じ地域において同じ紋章が存在することは許されない。紋章についてはさまざまな争議が起こることもあり、紋章を管理する公的機関が存在することも多い(イギリスの紋章院等)。
これらの紋章は戦場で使う盾、陣羽織 (Coat of Arms) 、鎧(プレートアーマー)、旗などに描いた他、騎士の時代が終わった後も封印(シール)、棺に使われる他、所有物(屋敷、アクセサリー、小物)に付けることが広く行われた。このヨーロッパの紋章形式は世界中に広まっており、通常、紋章といえばこの形式を指す。国章においても、ヨーロッパの国々のみならず、その植民地だった国を中心に広く使用されている。
紋章の例
例1は盾のみの小紋章である。全体が四分割されており、そのうち2つにフランス王家の百合の紋様、残りの2つにブルゴーニュ公の青と黄の斜め縞が入っており、真中にフランドル伯の紋章「立ち上がる獅子」を描いた小型の盾が追加されている。
例2のイギリス王室の紋章は大紋章である。盾の両側をイングランドの象徴の獅子とスコットランドの象徴のユニコーンで支えており、盾の上のヘルメットには王冠が置かれ、クレストは王冠をかぶった獅子である。盾の領域は四分割され、イングランドの紋章「3匹の獅子」が2つ入っており、スコットランドの紋章「立ち上がる獅子」、アイルランドの紋章ハープがそれぞれ描かれている。
例3のオーストリア・ハンガリー帝国の国章は、第一次世界大戦中に制定されたもので、多民族の融和を計るため最も複雑な構成となっている。オーストリアとハンガリーを表す2つの盾と王冠があり、それを支える1人はオーストリアを表すグリフォン(上半身が鷲、下半身が立ち上がる獅子)であり、他方はハンガリーを表す天使である。盾の中はハプスブルク家の紋章双頭の鷲を始めとする多数の構成民族の紋章が組み込まれている。また、盾の間には騎士団章(勲章)が配置されている。
John the Fearless Arms.svg 例1 ジャン1世の紋章 | UK Royal Coat of Arms.svg 例2 英王室の紋章 | Austria-Hungaria transparency.png 例3 1915年のオーストリア・ハンガリー帝国の国章 |
各国の紋章
イギリス
総ての紋章は紋章院で管理される。イギリスにおいては、クラブ、大学、師団などの紋章にその歴史やパトロンなどを示す図柄が入っていることが多い。
大紋章にサポーターを付けることは貴族やナイト爵など限定され者のみ認められている。また、貴族は紋章の中に冠 (Coronet) をつけることができる。
紋章学については、外部リンクを参照。
日本の家紋
紋章に当たるものは日本では特に家紋と呼ばれる。
家紋の項を参照。
関連項目
外部リンク