学部
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学部(がくぶ)とは、日本の大学(短期大学を除く)において、常例としての教育研究上の基本となる組織[1]のことである。
日本の大学制度は、欧米の大学制度と異なり、欧米の大学には、日本の学部と同等の組織はない。以下、日本の「学部」について説明する。
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概要
大学には、学部を置くことを常例とされている(学校教育法第85条本文)。学部には、学生と教員が同時に所属して(大学院所属教員の兼務としての学部所属を含む)専攻に基づく教育研究が行われる。また、日本では高等教育を行う学校(学校教育法第1条に定める「学校」)と位置付けられている短期大学と高等専門学校は、学部を置かず、学科を置く。
また、大学には、夜間において授業を行う学部または通信による教育を行う学部をおくことができる(学校教育法第86条)。「夜間において授業を行う学部」とは夜間における授業をもっぱら行う学部であり、「通信による教育を行う学部」は通信による教育をもっぱら行う学部である。夜間における授業や通信による教育は、通常の(昼間に授業を行う)学部でも行うことができるが、専用の学部をおいて行うこともできる。
学部においては、教育上必要と認められる場合には、昼夜開講制(同一学部において昼間及び夜間の双方の時間帯において授業を行う制度)により授業を行うことができる(大学設置基準第26条)。なお、「通信による教育を行う学部」に関しては、昼夜開講制について法令においては触れられていない。
学部の下には、さらに専攻分野を細かくした学科が設けられ、学科にも学生および教員が所属する学科制が一般的である。しかし、学科の代わりに学生の履修上の区分に応じて組織される課程が設けられる課程制をとる学部もある。なお、学科や課程の下にさらにコースが置かれるコース制を敷くものもある。制度上は、(学科に対する)課程、(学科や課程の下の)コースに所属するのは、学生のみでも構わないものの、これらの「課程」「コース」にも専任教員が置かれることがある。
学則に基づいて学部において卒業要件を満たした者は、大学を卒業することができ、(日本においては、通例では学部名を専攻分野名として付記した)「学士(専攻分野)」の学位が、学位記(卒業証書と一体となっているものを含む)とともに大学から授与される。
学部等 と 研究科等 の関係
日本の学校教育法以下においては、学部(学部以外の教育研究上の基本となる組織を含む)と、研究科(研究科以外の教育研究上の基本となる組織を含む)の双方については、個別に扱っている。
文部科学省への申請・届出上も、教員の本所属が学部(〔学系などの〕学部以外の教育研究上の基本となる組織を含む)と研究科(〔研究部などの〕研究科以外の教育研究上の基本となる組織を含む)どちらであるのかというのも明確にしなければならない。
日本の学部は、「卒業」をともなう課程である。これに対して、日本の大学院の課程は、すべて「修了」とされ、「卒業」とはされない。「大学院を卒業する」という表現は、法においては誤ったものである。
大学内においては、大学院の課程に対して、4年以上の課程または6年以上の課程を学部と呼ぶこともある。また、慣習的に○○学部の大学院という表現をすることもある。(後者の用例では、「○○大学○○大学院○○研究科」は、○○学部の教員・施設等を母体としているものとみなされる。)
「学部以外の教育研究上の基本となる組織」
当該大学の教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切である場合においては、学部以外の教育研究上の基本となる組織を置くことができる(学校教育法第85条ただし書)。
代表例として、学生が所属する学群・学類と、教員が所属する学系の2つをもって、「教育研究上の基本となる組織」とする方式がある。筑波大学は大学設置当初から学部を置いたことがなく、「学群・学類、学系」制である。福島大学・桜美林大学などは学部を廃止して「学群・学類、学系」制に移行した。
学校教育法(第85条および第100条を除く)および他の法令(教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)および当該法令に特別の定めのあるものを除く)において、大学の学部という用語には、学校教育法第85条に規定する「学部以外の教育研究上の基本となる組織」を含むものとされている(学校教育法141条)。
このため、「学部以外の教育研究上の基本となる組織」についても、申請・届出の場面を除けば、法的には、学部と同じ扱いとなるが、厳密には学部と同一のものではない。例えば「○○学群」の課程を修めて大学を卒業した場合は、「○○学部卒業」と履歴書などに書くと不適切な記載となる。
学部の一覧
「学部の一覧」を参照
新規かつ没個性な学部名への批判
2010年3月31日号の『SAPIO』誌上で、『人間』『環境』『創造』『キャリア』『グローバル』『メディア』などの語を濫用した学部が批判された。具体例として、「人間看護学部」が、「動物看護を専門とする学部や学科が学内にあるわけでもない」のに、「人間」という語を無意味に冠するとして、槍玉にあがった。
註
- ^ 学校教育法第85条、大学設置基準第3条
備考
- 通常、学部は大学(大学院大学を除く)に置かれているが、代々木アニメーション学院など、ごく一部の専門学校にも置かれている。
関連項目