名誉
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名詞としての「名誉」
名誉(めいよ、Honour)とは、自身の業績、功績、態度、姿、振る舞い、あり方、生き方を讃えられ、それをすぐれている、価値があると自他共に認め、それを自らの尊厳、誇りと見なすこと。「何かを名誉に思うこと」を誇りという。また、社会的地位が高く名声があることも名誉と考えられ、こうした名誉を望む欲求を名誉欲という。
それが傷つけられ、害われた場合には、それを回復するために命懸けの決闘を挑むということもある。日本の中世の武家社会では、これは切腹、仇討ちというかたちを採ることもあった。赤穂浪士による主君の名誉を雪ぐための吉良邸討ち入りもその好例である。
体面に固執する振る舞いは滑稽で醜い姿に見える(世間体や名誉職にしがみ付く有り様など)。一方、恥も外聞も無い人間、誇りを忘れた人間は、醜い行動を平気で行う(儲かるためなら、ほかの誰かが傷ついても、死んでも、何がどうなってもいい、という振る舞いなど)。
日本においては、第二次世界大戦前の価値観において体面に重きを置き過ぎたとの省みから、体面より実質、外側より中身を大事にしようとする気風が生まれたが、逆に振り子を振り過ぎて、尊厳や誇りをどうでもいいと思う風潮が生まれた。その風潮への抵抗として、誇りに価値を置きたいという気風もまた生まれている。
20世紀末-21世紀初頭の世界では、グローバリズムという言葉で表されている実用主義や利己主義の拡大の過程において、蔑ろにされようとしている(とする流れがある)。
形容詞としての「名誉」
優れた業績を成したり、大いなる貢献をした人物を讃えて、大学や学会などの特別な地位(栄誉職、名誉職)や称号を贈る場合に冠される言葉。以下のような例がある。
- 名誉総裁(日本赤十字社、公益法人など)
- 名誉騎士(イギリス王室など)
- 名誉会長(エクアドル政府など)
- 名誉教授(大学)
- 名誉学長(大学など)
- 名誉院長(病院など)
- 名誉会長(学会、企業など)
- 名誉会員(学会など)
- 名誉社長(日本赤十字社など)
- 名誉社員(日本赤十字社など)
- 名誉消防団長(消防団など)
- 名誉消防団員(消防団など)
- 名誉会長(企業など)
- 名誉大使(都道府県など)
- 名誉市長(市町村など)
- 名誉市民 など(地方公共団体:付与する団体によって都道府県市区町村それぞれ名称が異なる)
- 名誉師範(学会など)
- 名誉博士(大学など。いわゆる名誉学位のひとつ)
- 名誉国民(国家)
- 名誉名人(日本将棋連盟など。同様に名誉十段なども存在する)
- 名誉棋聖(日本棋院。同様に名誉碁聖なども存在する)
名誉会長や名誉教授は会長、教授として顕著な実績を残した者に送られる場合が主であるが、将棋界の名誉名人は名人になっていないが名人級の功績のある者に与えられる。名誉市民などはその地域に貢献した場合や、地域出身の成果を残した人物に付与され、本籍・住民票が現在無くても与えられることが多い。名誉白人は以上のものとはやや性格が異なるが、人種差別が公式に存在する国家で「国家・地域に貢献した白人でない人物・人種に付与」されるものである。
必ずしも全てがそうとはいえないが、名誉を冠する地位はそれが無い地位に比べ一般的に会費納付などの義務や議決権行使などの権利を有しない場合が多い。
法的な名誉 名誉権と名誉毀損
法律上において名誉とは人権のひとつと考えられる。個人や法人のプライバシーの侵害行為や誹謗中傷などにより社会的評価が下がり、信用の低下或いは喪失に伴う失職、職業上、或いは生活上の不利を蒙ることを名誉毀損といい、損害賠償の対象や犯罪としての構成要件となる(名誉毀損罪参照)。このような不当行為から名誉を守り、または回復する権利を名誉権という。
- 発明者名誉権
名誉にまつわる言葉
- 地位と名誉 社会的に高い地位と名声・名望があること
- 名誉ある撤退 大義ある撤退のこと
- 名誉なこと 表彰される場合に、答礼として述べる。「光栄なこと」と同義。
文献情報
関連項目