エアクリーナー
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エアクリーナー(Air cleaner)とは、エンジンやエアコンの吸気部に装着されるエアフィルタ又はそれを納めた装置である。
自動車用語としてはエンジン吸気用途のものがエアエレメント、エアコン吸気用のものがクリーンエアフィルタと呼び分けられており、どちらも不織布等の濾材で大気中に含まれる粉塵などを分離し、清浄な空気を供給するために用いられる。
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方式
乾式
エアクリーナーの構成材料の構造を利用して清浄機能を果たすものを乾式と呼ぶ。
主に濾紙を蛇腹状に折りたたみ、金属や樹脂の枠にはめた構造となっている。フィルターの色が真っ黒になったら交換時期となる。使い捨てのカセット式なので交換は簡単である。手入れ方法として、吸気側の方向からコンプレッサーの高圧エアでゴミを吹き飛ばす手法が行われてきたが、濾紙の質が良くなり、ゴミを濾紙内部に強く取り込むようになったことから、あまり意味が無くなった。
湿式
フィルタ部に、特殊な薬品やオイルを染み込ませ粉塵等の吸着力を上げて効果を発揮するものを湿式と呼ぶ。
汎用エンジンや原付スクーターなど、小排気量エンジンで、寸法上濾過面積の大きなフィルター(エレメント)が設置できない場合や、チューニングに際し、吸気抵抗を低減する目的で濾過面積を大幅に減らし、濾過性能が犠牲となる場合(いわゆるスポーツフィルターと呼ばれるもの)の救済策として使われている。
主にスポンジやポリウレタン素材を金網の枠にはめた構造となっている。フィルターの色が真っ黒になったらオイルで洗浄し、再び薬品やオイルを染み込ませる。乾式とは違い、加水分解などで素材が破損しない限り再利用が可能である。
オイルバス式
湿式のオイル量を増やし、エアクリーナーケース内にオイルを溜めたもので、吸気がこのオイル溜まりを通過する際にオイルが埃を取り込む。清掃はオイル交換によって行う。多くは湿式フィルターを併用する。
砂漠を走行する必要のある自動車や、作業の性質上、埃の多い環境で使われる建設機械など、通常のフィルター式では短時間で目詰まりを起こす場合に用いられる。
ビスカス式
乾式のエアクリーナーの濾紙にビスカスオイルを染み込ませ、ゴミの吸着力を向上させたものをビスカス式と呼ぶ。ゴミの吸着力は高いが、オイルが染み込ませてあるので圧縮空気での掃除は出来ず、汚れた場合は交換となる。K&Nエンジニアリング製に代表される社外品の中にはメンテナンスキットが用意されている物もあり、こうしたものは湿式同様に洗浄し素材が破損するまで再利用が可能となっている。
遠心式エアクリーナーケース
サイクロン式などとも呼ばれるが、一般的に乾式フィルターと組み合わされる。
吸気自体がエアクリーナーケースの中で渦流を起こし、空気と埃をあらかじめ遠心分離することで、フィルターの交換周期を延ばす方式。ケースの形状は円筒形で、渦の発生を助ける整流器(ウイング=多くの羽根を持つ円筒形の部品)を持つものもある。底部に着脱式のダストポットを備えており、そこにたまった埃を簡単に捨てることができる。
建設機械などでは、ケースを透明素材としてエンジンフードの外に設置し、たまった埃の確認を容易にしている。
用途
自動車用
一般に蛇腹状(平形)あるいは菊花状(円筒形)に細かく折り曲げられて表面積を稼いだ濾紙が、金属製の網や平板や筒状に作られたケースの中に納められている形状を持つ。これを乾式といい、濾紙の代わりに油を染みこませたスポンジを用いるものを湿式という。かつては湿式フィルターが主流であったが、乾式の取り扱いやすさと濾紙の性能向上により、スポーツ用など限られた用途を除き、大部分のシェアを占めるようになった。
航空機用
一例を挙げる。ある小型ピストン飛行機(SOCATA TB10)の場合、空気の経路はエアインテイク→ダクト→エアフィルタ→キャブレター(ここでガソリンと混合される)→各シリンダとなっている。
フィルタ自体は油をしみこませたスポンジのような感じで、触るとべたべたしている。
この機種の場合、メインテナンスマニュアルによると1年ごとにフィルタを交換することが義務づけられていたが、新品のフィルタを密閉している包装には、100時間ごとに交換すること、洗浄などして再使用してはならないことが明記されていた。