モールス符号
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モールス符号(モールスふごう)(Morse code)は、電信で用いられている可変長符号化された文字コードである。
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歴史
アメリカ合衆国の発明家サミュエル・フィンレイ・ブリース・モールスは、1837年9月4日にニューヨーク大学で現在のものとまったく異なった符号で電信実験を行い、ジョセフ・ヘンリー(プリンストン大学教授)の指導とアルフレッド・ヴェイルの協力の下、改良した符号と電信機との特許を1840年6月20日に取得した。更に改良した符号(アメリカン・モールスと呼ばれ、当時指導を受けた電信手のOBなど極一部に、現在も使う人がいる)により1844年5月24日に実際の送信実験に成功した。この名称は発明者にちなんだものである。
1849年にフリードリヒ・クレメンズ・ゲールケが改良した符号をもとに、DÖTVの1851年10月ウィーン会議において標準規格として条約が結ばれた。その後、1868年7月にウィーンで開催されたUTI(Union Télégraphique Internationale、国際電信連合、現ITU)において現在のものの原型が国際規格として承認された。
陸上同士の通信においては、電報などの文字通信で多く使われたが、1920年代からテレタイプ端末による電信・1930年代からテレックス・1980年代からファクシミリ・1990年代後半から電子メールなど他のデジタル通信方式の発達により、陸上業務用にはモールス通信は次第に使われなくなった。
一方、遠洋航海する船舶同士、あるいは船舶と陸上との通信においては、通常の通信から万一の際の遭難信号(SOS)まで、長い間中波および短波を使ったモールス通信が行われ、映画などで船舶内の無線室でモールス通信を行うシーンも良く出ていたが、通信衛星の登場によって短波によるモールス通信は縮小し、非常用の通信手段としても国際海事機関(IMO)の決定により、国際的な船舶安全通信がGMDSSに1999年2月に完全に移行したため、モールス通信は基本的に使われなくなった。日本では、1996年に海上保安庁が、またNTTグループやKDD(現KDDI)も1999年までにモールス符号を用いた通信業務を停止した。アマチュア無線・漁業無線・陸上自衛隊の野戦通信では、現在もモールス符号を用いた通信が行われている。
概要
短点と長点の組み合わせだけで構成されている単純な符号である事から、修得者は無線通信に限らず音響や発光信号でも会話や通信に活用している(投光・遮光が一挙動で自由に出来て信号を送れる、レバー付きブラインドを内蔵したサーチライトを持つ大型船舶が存在する)。また、上級の通信士(総合無線通信士)およびアマチュア無線技士(2級以上)の国家試験において、モールス符号を用いた通信の実技試験がある。そもそも、あらゆる状況下で通信を確保することが通信士の責務である。
一般に、モールス符号の短点を「トン」(あるいは「ト」)、長点を「ツー」と表現することが多いため、俗に「トンツー」とも呼ばれる。
初期の送受信機
モールスの送信機は、機械式スイッチ(電鍵)の接点を手動で開閉するものであった。
紙テープを事前に穿孔してそれにより接点を開閉する方式の自動送信機を1846年にベインが発明した。1866年からイギリスのチャールズ・ホイートストンが製作した自動送信機が広く使われた。
1837年にアルフレッド・ヴェイルが発明した、紙テープに電磁石で動かした針の圧力で刻むエンボッシング方式が最初に使われたが、紙の巻き取りなどで鮮明でなくなり判読に苦労するものであった。1854年にトーマス・ジョンがインクで印を付ける方式を考案した。また、1860年代には、紙テープを動かして固定したペンに接触させたり離したりする方式に改良された。
機械式継電器の音で符号を判別する音響受信は最初禁止されていたが、同時筆記が可能なため、のちに広く行われるようになった。
符号化方式
国際モールス符号は短点(・)と長点(-)を組み合わせて、アルファベット・数字・記号を表現する。長点1つは短点3つ分の長さに相当し、各点の間は短点1つ分の間隔をあける。また、文字間隔は短点3つ分、語間隔は短点7つ分あけて区別する。
策定については、標準的な英文におけるアルファベットの出現頻度に応じて符号化されており、よく出現する文字ほど短い符号で表示される。例を挙げると、Eは(・)、Tは(-)とそれぞれ1符号と最短である。逆に使用頻度が少ないと思われるQは(--・-)、Jは(・---)と長い符号が制定されている。
これに対して、和文のモールス符号では出現頻度がまったく考慮されておらず、通信効率に劣ったものとなっている。和文モールス符号で(・)と(-)が意味するのはそれぞれ「ヘ」と「ム」である。これはイロハ順をそのままABCに当て嵌めたためである。
通信速度の表記には、字/分のほか、短点50個分(1ワード)の1分間当たりの出現回数WPM(words per minute)が用いられる。短点50個の基準として『PARIS』の符号を用いることからPARIS速度とも呼ばれる。例えば10WPMは50字/分に相当する。符号の速度が同じであっても、英語の平文では出現頻度の多い文字ほど符号が短いため、実際の文字数は多くなることがある。
欧文モールス符号
アルファベット
文字 | 符号 | 信号音 | 文字 | 符号 | 信号音 |
---|---|---|---|---|---|
A | ・- | Aの符号 | N | -・ | Nの符号 |
B | -・・・ | Bの符号 | O | --- | Oの符号 |
C | -・-・ | Cの符号 | P | ・--・ | Pの符号 |
D | -・・ | Dの符号 | Q | --・- | Qの符号 |
E | ・ | Eの符号 | R | ・-・ | Rの符号 |
F | ・・-・ | Fの符号 | S | ・・・ | Sの符号 |
G | --・ | Gの符号 | T | - | Tの符号 |
H | ・・・・ | Hの符号 | U | ・・- | Uの符号 |
I | ・・ | Iの符号 | V | ・・・- | Vの符号 |
J | ・--- | Jの符号 | W | ・-- | Wの符号 |
K | -・- | Kの符号 | X | -・・- | Xの符号 |
L | ・-・・ | Lの符号 | Y | -・-- | Yの符号 |
M | -- | Mの符号 | Z | --・・ | Zの符号 |
和文モールス符号
イロハイロハ順に欧文モールス符号を当てたものが基本となっている。
| 数字欧文モールス符号と同じ。 記号
備考:和文モールス符号でアルファベットを打つには、その部分を括弧()で括る。 |
中国モールス符号
中国語はどこの国とも構成が違い、漢字一文字に4桁の数字がコードとして割り当てられている(電碼)。漢字を数字にエンコード、また数字を漢字にデコードする為の「標準電碼本」(中国郵電部(現・情報産業部) ISBN 7-115-04219-5)というコードブックが存在する。
アメリカンモールス符号
参考文献
- 安岡孝一、安岡素子『文字符号の歴史』欧米と日本編、東京、共立出版、2006年2月、ISBN 4-320-12102-3。
関連項目
外部リンク
- サザンプトン大学
- Omnicron.com
- A Morse code trainer for Windows 32 bit machinesゅOpen sourceょ
- エスペラント語モールス符号
- ロシア語、ギリシャ語、ヘブライ語、ハングル、アラビア語、エスペラント語のモールス符号を紹介しているページ
- モールス符号による通信専門のアマチュア無線クラブ