ギリシア語
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ギリシア語 Ελληνικά | ||
---|---|---|
発音 | IPA: [eˌliniˈka] | |
話される国 | ギリシア、キプロス、アルバニア南部、イタリア南部、マケドニア共和国南部、ブルガリア中央・南部、トルコおよび周辺国 | |
地域 | バルカン半島 | |
総話者数 | 1200万人[1][2] | |
話者数の順位 | 第74位 | |
言語系統 | インド=ヨーロッパ語族 ケントゥム語派 ギリシア語派 ギリシア語 | |
表記体系 | ギリシア文字 | |
公的地位 | ||
公用語 | ギリシャ キプロス 欧州連合 | |
統制機関 | なし | |
言語コード | ||
ISO 639-1 | el | |
ISO 639-2 | gre (B) | ell (T) |
ISO 639-3 | 各種: ell — 現代ギリシア語
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ギリシア語(ギリシアご、現代ギリシア語:ελληνικά または ελληνική γλώσσα)は、インド・ヨーロッパ語族に属する言語。単独でギリシア語派を形成する。ギリシア共和国やキプロス共和国、イスタンブルのギリシア人居住区などで使用されており、話者は約1200万人[1][2]。また、ラテン語とともに学名や専門用語にも使用されている。
目次 |
概要
ギリシア語は、インド=ヨーロッパ語族の中で最も古くから記録されている言語であり、その歴史は3400年にわたる[3]。ギリシア文字で記されるようになったのは、ギリシアでは紀元前9世紀、キプロスでは紀元前4世紀以後のことである。それ以前では、紀元前2千年紀半ばには線文字Bが、紀元前1千年紀前半にはキプロス文字 (Cypriot syllabary) が、それぞれ使われていた。
ギリシア語は今日においても、人類史上最も強い影響力を持った文明の言語、あるいは3千年間継承されてきた史上最も偉大な文学を生んだ言語のひとつとみなされ、広く尊敬の念を集めている。その語彙は学術用語として英語をはじめとする欧米諸言語に多数借用されており、英語の語彙のうちの12%がギリシア語由来であると推定される[2]。ギリシア語はまた、『新約聖書』原典を記すのに用いられた言語でもある。ヘレニズム時代には東地中海世界の通商語として広まり、中世には東ローマ帝国領の大半にあたる広大な地域(中東・北アフリカ・東南ヨーロッパ・アナトリア半島)に波及した。
使用地域
公用語として使用している国
その他に使用されている地域
欧米諸言語への影響
ギリシア語の語彙はヨーロッパの諸言語に広く借用されている。特に英語においては、数学(mathematics)・天文学(astronomy)・民主主義(democracy)・哲学(philosophy)・修辞学(rhetoric)・俳優(thespian)・陸上競技(athletics)・劇場(theater)などのほか、ギリシア語の単語やその要素は新たな造語の元にもなっている。人類学(anthropology)・写真(photography)・異性体(isomer)・生体力学(biomechanics)・映画(cinema)・物理学(physics)などがそれに当たる。また、ラテン語とともに国際的な学術用語の拠り所ともなっている。たとえば -logy(談話)で終わる語はすべてギリシア語由来である。ギリシア単語の多くが英語の派生語を有する一方、ギリシア語に起源を持つと推測される英語の語彙はその内の12%である[2]。
歴史
前近代
ギリシア語は、おおよそ紀元前3千年紀後半にはバルカン半島で話されていた。最も古い痕跡は、クレタ島のクノッソス宮殿内の「2頭立て馬車の粘土板の部屋」にある線文字Bの粘土板(LM IIIA, 紀元前1400年頃)に見出せる。ギリシア語が現在使用されている言語の中で世界最古に記録されたもののひとつとされる所以である。インド=ヨーロッパ語族の中で、記録を確認できる年代がギリシア語に匹敵する言語は、ヴェーダ語 (Vedic Sanskrit) とヒッタイト語(死語)のみである。
後年のギリシア文字(線文字Bとの関連はない)はフェニキア文字に由来する。フェニキア文字はアブジャド(単子音文字)であったため多少手が加えられ、これが今日でも使用されている。ギリシア語は慣例的に以下のように区分される。
- ギリシア祖語 (Proto-Greek)
- 確認されているすべてのギリシア語の、想定上の原型。実際の記録には残されていない。ギリシア祖語の話者は、おそらく紀元前2千年紀前半にギリシアへ移住してきた。以来、ギリシアでは絶え間なくギリシア語が話されてきた。
- コイネー
- 様々な古代ギリシア語方言と、古典期のアッティカ方言(アテナイの方言)の融合体。初の共通ギリシア語方言であり、東地中海と近東全域の通商語となった。コイネーはまず、マケドニア軍とアレクサンドロス大王の征服地にその足跡を辿ることができる。ヘレニズム時代に各地に植民都市が建設されたのちは、エジプトからインド周辺にまで到る地域で話されるようになった。共和政ローマによるギリシア征服後は、ローマ市内ではラテン語とギリシア語のダイグロシア(二言語併存)が定着し、ローマの領域全体でも第一言語または第二言語の地位を獲得した。しかしながら、中世になると西ヨーロッパでは廃れていった。
キリスト教の起源を明かにできるのもコイネーである。使徒の伝道が、ギリシアやギリシア語圏で行われていたからだ。このときに用いられたコイネーは、『新約聖書』原典にも使用されたことから新約聖書ギリシア語と呼ばれるほか、アレクサンドリア方言や後古典ギリシア語としても知られる。
- 中世ギリシア語(ビザンツ語とも) (Medieval Greek)
- 東ローマ帝国で用いられた、コイネーの後継。とはいえ、すでに多くの点で現代ギリシア語に近づいていた日常の話し言葉から、古典期のアッティカ方言に倣った高度に学問的な文語までが含まれており、その意味するところは多岐にわたっている。「中世ギリシア語」とは、15世紀に帝国が終焉を迎えるまでのギリシア語全体を包括する用語と言える。帝国の公用語となった文語の多くは、文語コイネーの伝統に基づいて生まれた折衷的・中立的なものであった。コンスタンティノープルの陥落に伴ってギリシア人がイタリアに移住すると、ギリシア語は再び他のヨーロッパに紹介された。
- 現代ギリシア語 (Modern Greek)
- 中世ギリシア語から派生しているため、語法の起源は東ローマ帝国時代(早ければ11世紀)に求めることができる。現代ギリシア語は、その名のとおり現代のギリシア人によって話されている言語である。標準語とは別にいくつかの方言が存在し、東ローマ帝国の時代から伝わる民間人の口語(デモティキ)と、公文書や文学・神学書等で用いられてきた古典ギリシア語に近い文語(擬古典語)を元にした「カサレヴサ」の間を揺れ動きながら成立してきた。
現代ギリシア語の成立
まず口語では、ソフィアノスの口語ギリシア語の文法書が文献上で初出である。しかし18世紀のヴルガリスは、擬古典語を堅持した。ミシオダクスは新しい共通語を基礎にと主張。カタルジスは学者として初めて口語民衆語を支持した。一方、アダマンティス・コライスは、コイネーを規範とし、口語を純化(カサレヴサ化)した古典的ギリシア語に基づく新しい規範的ギリシア語を作ることを最初に訴えた。
1833年にギリシャ王国が成立すると、新国王オソン1世とともに故国に帰った官僚は、コイネーを規範とする古典的カサレヴサを標準とすべきと主張した。一方では、口語に基づいた民衆語をギリシア語にするべきだという文学者ディオニシオス・ソロモスの主張[4]も存在した。
その後、永くフランスのパリで活躍したプシハリスが、民衆口語が通時言語学的に公用語として適切であり、現代ギリシア語は口語によるべきであることを国際的な学者・作家として初めて言語学的根拠をもって立証した。当時行政言語に主流であったカサレヴサは、通時言語学に反した復古的・人工的なもので、公用語でも文学語においても失当である旨を『わが旅』等で文学作品の中で実践してもいる。
しかしその「口語」は、数ある方言のうち「アテネ方言」のみを指称するもので、当時の方言をまとめるには、かつてのコイネーを基盤とするカサレヴサの方が、ギリシア全体の共通語として(方言をまとめるために)より一般化しやすい言語であった[5]。方言学者はどちらの陣営にも属さず、地域方言をその地域の「口語」として、教育言語に使用することを折衷案として唱えた。エーゲ海のサモス島やスミルナで女子校の運営にあたったレオンディアス・サッフォーは、学校教育においても方言を推奨し、言語論争に「方言」の重要性を提起した。「カサレヴサ」の長所と、アテネ方言の「ディモティキ」との折衷言語よりも「民衆語である方言」の重要性を強調した。
20世紀後半に入ると、首相のエレフテリオス・ヴェニゼロスは新憲法にカサレヴサを公用語にすることを記載した。ただし初等教育については、トリアンダフィリデスの主宰する教育学会が文法書をデモティキで出版し、民衆口語(アテネ方言)化が公的に行われた。やがて、イオアニス・メタクサスの独裁政権の下ではカサレヴサではなくデモティキが正式な国語と制定され、またその後の政変で再度カサレヴサに戻された。1964年、ゲオルギオス・パパンドレウ政府がカサレヴサとデモティキとをともに公用語(併用)とするも、軍政下ではカサレヴサが公用語に再度戻された。1974年7月24日の民主政回復を経て、最終的にコンスタンディノス・カラマンリス政府の下、1976年にデモティキが正式な公用語と定められ今に至る。
しかし、司法用語(たとえば民法)は依然カサレヴサのままで存続している。判例などもカサレヴサで起草・公示されており、大学学位論文、公的公報等でも用いられ続けている。このほか、正教会の典礼用語もカサレヴサが正式な権威ある言語として依然と使用され続け、デモティキと並存しているのが現状である。
現代語話者と古典
「教養ある」現代語話者は古典を解することができる。その背景には古典と現代語の類似性だけでなく、教育が機能していることが挙げられる。『新約聖書』原典や七十人訳聖書に書かれたギリシア語であるコイネーは、現代の話者でも比較的理解しやすい。イギリスの歴史家ロバート・ブラウニングが言ったように「現代ギリシア語の話者にとって、紀元前7世紀に書かれたホメーロスの叙事詩は決して外国文学ではない。ギリシア語は、その最古の時代より現在に至るまで、連綿と受け継がれ、親しまれているのである」[6]。
文法概要
文字と発音
詳細は「ギリシア文字」を参照
大文字、小文字、現代の音価、慣用(古典期)の呼び名、現代の呼び名(慣用と同じ場合省略)、現代の綴りの順で記載。
- Α α=[a](アルファ)άλφα
- Β β=[v](ベータ;ヴィタ)βήτα
- 紀元後数百年に [b] から変異。
- Γ γ=[ɣ](ガンマ;ガマ)γάμμα, γάμα
- [x] の有声音。ただし前舌母音の直前では [ʝ] と発音される。
- Δ δ=[ð](デルタ;ゼルタかデルテ)δέλτα
- [θ] の有声音。閉鎖音から摩擦音に紀元後数百年に変異。
- Ε ε=[e](エプシロン)έψιλον
- 「単純なε」の意。
- Ζ ζ=[z](ゼータ;ズィタ)ζήτα
- Η η=[i](イータ;イタ)ήτα
- 後1世紀より [ɛː] から変異。
- Θ θ=[θ](シータ;シタかティタ)θήτα
- 英語の無声 th に同じ。
- Ι ι=[i](イオタ;ヨタ)γιώτα
- 母音の直前では硬口蓋化し [j] と発音される。
- Κ κ=[k](カッパ;カパ)κάππα
- [i], [e] の直前では [c] と発音される。
- Λ λ=[l](ラムダ;ラムザ)λάμβδα, λάμδα
- Μ μ=[m](ミュー;ミ)μι
- Ν ν=[n](ニュー;ニ)νι
- Ξ ξ=[ks](クシー;クシ)ξι
- Ο ο=[o](オミクロン)όμικρον
- 「小さなο」の意。
- Π π=[p](ピー;ピ)πι
- [m] の直後では [b] と発音される。
- Ρ ρ=[r](ロー;ロ)ρο
- Σ σ, ς=[s](シグマ)σίγμα
- 有声子音の前で [z] と発音される。ς は語末のみ。
- Τ τ=[t](タウ;タフ)ταυ
- [n] の直後では [d] と発音される。
- Υ υ=[i](ウプシロン;イプシロン)ύψιλον
- 「単純なυ」の意。後5世紀〜10世紀に [y] から変異。
- Φ φ=[f](フィ)φι
- 紀元後数百年に [pʰ] から変異。
- Χ χ=[x](キー;ヒ)χι
- 前舌母音の直前では [ç] と発音される。紀元後数百年に [kʰ] から変異。
- Ψ ψ=[ps](プスィ)ψι
- Ω ω=[o](オメガ)ωμέγα
- 「大きなο」の意。
カナ転写と発音の問題
- カタカナに現代ギリシア語を転写するとき、θ は主にサ行で表記・発音(θα を「サ」、θι を「シ」など)されているが、ギリシア人から見れば[要出典]タ行のほうがわかりやすい。
- 同様に、δ は主にザ行で表記されているが、ダ行のほうがわかりやすい[要出典]。
- 現代ギリシア語では二重子音があっても発音が変わらないので、日本語の「ッ」を使う必要はない。たとえば、τέσσερα は「テセラ」であり、「テッセラ」とはならない。
- 多くの場合、現代ギリシャ語のアクセントは長音記号「ー」で表されているが、ギリシア語のアクセントは強勢を示すものであり、長母音を示さない。たとえば、Μαρία は「マリーア」のように伸ばすより「マリア(マリッア)」のよう強く読むほうがいい。「マリーア」では、 Μαρίια に近くなってしまう。
記号
ディモティキ(民衆口語)では、いわゆる「トーノス(τόνος)」の記号類は ΄ のみにモノトニコス(単強勢)化されている。気息記号の ῾(音韻上で無標である有気音 [h] を表す)や ᾿ などは廃され、` や ῀ などは、΄ に統合され、有強勢(文法的に有標)の際にのみ記される。またこの強勢記号は語末から3番目の音節のうちに置かれる。カサレヴサでは古典語のテキスト表記に倣った古典式の記号・符号を維持している。
疑問符にはいわゆるセミコロン ; を用いる。Unicode ではこの記号に、U+003B の SEMICOLON とは別に U+037E に GREEK QUESTION MARK が割り当てられてはいるが、Windows のギリシア語 IME では U+003B が出てくる。
現代ギリシア語の発音
母音 Φωνήεντα
単母音 - 便宜上、音価別に並べる。
- [a] - α
- /e/ ([e], [ɛ]) - ε, αι
- [i] - η, ι, υ, ει, οι, υι
- [u] - ου 日本語のウより口をとがらして発音
- [o] - ο, ω
現代ギリシャ語では母音の長短の区別がない。
母音+子音 - 以下の3つは υ の発音が無声子音の前で無声音 [f] に、有声子音・母音の前で有声音 [v] になる。
- αυ - [af], [av]
- ευ - [ef], [ev]
- ηυ, ιυ - [if], [iv] (現代語ではほとんど使われていない)
子音 Σύμφωνα
二重子音字
- γγ - [ŋ], [i], [e], [ɛ] の前なら口蓋化する(ンギ、ンギェとなる)。
- γκ - 語頭で [g]、それ以外で [ŋg]。[i], [e], [ɛ] の前なら口蓋化する(ンギ、ンギェとなる)。また、外来語では [g], [ŋk] の音も表される。
- μπ - 語頭で [b]、それ以外で [mb](外来語では [b], [mp] の音も表される)。たとえば Ολυμπία の場合、国際的には「オリンピア」の発音で知られているが、外来語ではなくギリシアの固有語であるため、「オリンビア」と発音される。
- ντ - 語頭で [d]、それ以外で [nd](外来語では [d], [nt] の音も表される)。
比較的古い外来語では b は β、d は δ、g は γ と転写された。外国の地名のギリシア語表記も原音の [b], [d], [g] をそれぞれ β, δ, γ と表記する例がかなり多い。
古典式発音との違い
同じ単語でも、古代ギリシア語と現代ギリシア語の発音は異なる。以下にその例を挙げる。なお、ここでいう「古典式発音」とは古代ギリシア語の諸方言中の古典期アッティカ方言(再建音)を指す。ギリシア語綴りに用いる記号は現代語のものである。
ギリシア語綴り | 古典式発音 | 現代式発音 |
---|---|---|
βάρβαροι | バルバロイ | ヴァルヴァリ |
Βάκχος | バッコス | ヴァクホス |
βασιλεία | バシレイアー | ヴァシリア |
Δήλος | デーロス | ディロス |
Ευρώπη | エウローペー | エヴロピ |
Ηρακλής | ヘーラクレース | イラクリス |
Θεσσαλονίκη | テッサロニーケー | セサロニキ |
Κρήτη | クレーテー | クリティ |
Μουσική | ムーシケー | ムシキ |
Οδύσσεια | オデュッセイア | オディシア |
πολλοί | ポッロイ | ポリ |
φιλοσοφία | ピロソピアー | フィロソフィア |
φύσις | ピュシス | フィシス |
現用ギリシア語文法
以下現用の言語(langue vivante)の文法を解説する。
名詞には3つの性があり(指小辞の語彙形が発達して意味を失い該中性形が発達した。)、数(単数と複数に統合した)・格(Nominativus=主格、Vocativus=呼格、Accusativus=対格、Genetivus=属格、Dativus=与格は文語にのみ残存しGenetivusと前置詞+Gen./Acc.形に統合された)などによって語尾が変化する屈折言語である。
動詞には不定形が廃れ、一人称単数現在継続形が辞書の見出し語となる。また、瞬間的な動作を表すのにアオリスト(瞬時形)という形(コイネーの語彙形態素を継承している通時言語学上の規範形でアオリストのアスペクトを指す)をとり、現在形等のテンスの基本形である継時形(継時的アスペクト)と語形が大きく異なるものも多い。
基本的には、古典ギリシア語にあった与格が消滅した。動詞の体系が、瞬時相と継時相(アスペクトの相違)に分化がすすみ、迂言形が発達した。また不定形が消失したが、コイネー以来の文法形態素・基本の(人称語尾)活用形の基礎を保持している。ただし、語順に規制的な拘束性が増した。
定冠詞
単数 | 複数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 中性 | 男性 | 女性 | 中性 | |
主格 | ο / o | η / i | το / to | οι / oi | οι / oi | τα / ta |
対格 | τον / ton | την / tin | το / to | τους / tous | τις / tis | τα / ta |
属格 | του / tou | της / tis | του / tou | των / ton | των / ton | των / ton |
不定冠詞
男性 | 女性 | 中性 | |
---|---|---|---|
主格 | ενας / enas | μια / mia | ενα / ena |
対格 | ενα / ena | μια / mia | εμα / ema |
属格 | ενος / enos | μιας / mias | ενος / enos |
- 複数形は無標
名詞
O曲用(第2曲用)
男性 | 女性 | 中性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | |
主格 | -ος / -os | -οι / -i(oi) | -ος / -os | -οι / -i(oi) | -ον / -on | -α / -a |
呼格 | -ε / -e | -οι / -i(oi) | ||||
対格 | -ον / -on | -ους / -ous | -ον / -on | -ους / -us(ous) | -ον / -on | -α / -a |
属格 | -ου / -ou | -ων / -on | -ου / -ou | -ων / -on | -ου / -u(ou) | -ων / -on |
与格 | -ω / -o | -οις / -is(ois) | -ω / -o |
- ボールド体はカサレヴサ接尾。女性名詞はカサレヴサのみ。
子音曲用(第3曲用)
男性 | 中性 | |||
---|---|---|---|---|
単数 | 複数 | 単数 | 複数 | |
主格 | ゼロ形 | -ες / -es | -α / -a | -α / -a |
対格 | -α / -a | -ας / -as | -α / -a | -α / -a |
属格 | -ος / -os | -ων / -on | -ος(-ους) / -os(-us) | -ων / -on |
A曲用(第1曲用)
男性 | 女性 | |||
---|---|---|---|---|
単数 | 複数 | 単数 | 複数 | |
主格 | -ας / -as | -ες / -es | -α / -a | -ες / -es, -αι / -e |
対格 | -α / -a | -ες / -es | -αν / -an | -ες / -es, -αι / -e |
属格 | -α / -a | -ων / -on | -ας / -as | -αις / -es |
- ボールド体はカサレヴサ接尾。
形容詞の活用語尾
- 1:幹母音式曲用(括弧[]内はカサレヴサ接尾)
男性 | 女性 | 中性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | |
主格 | -ός | -οί | -ή | -ές[αί] | -ό[ν] | -ά |
対格 | -όν | -ούς | -ή[ήν] | -ές[άς] | -ό[ν] | -ά |
属格 | -όυ | -ών | -ής | -ών | -όυ | -ών |
- 例「大きい」
男性 | 女性 | 中性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | |
主格 | μεγάλος | μεγάλοι | μεγάλη | μεγάλες | μεγάλο | μεγάλα |
対格 | μεγάλο | μεγάλους | μεγάλη | μεγάλες | μεγάλο | μεγάλα |
属格 | μεγάλου | μεγάλων | μεγάλης | μεγάλων | μεγάλου | μεγάλων |
- 2:無幹母音式曲用(括弧[]内はカサレヴサ接尾)
男性 | 女性 | 中性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | |
主格 | -ύς | -ιοί [είς] | -εία | -ιές[είαι] | -ύ | -ιά[έα] |
対格 | -ύ[ύν] | -ιούς[είς] | -ιά[είαν] | -ιές [είας] | -ύ | -ιά[έα] |
属格 | -ιού[έος] | -ιών[έων] | -ιάς[είας] | -ιών[ειών] | -ιού[έος] | -ιών[έων] |
- 例「深い」
男性 | 女性 | 中性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | |
主格 | βαθύς | βαθιοί | βαθιά | βαθιές | βαθύ | βαθιά |
対格 | βαθύ | βαθιούς | βαθιά | βαθιές | βαθύ | βαθιά |
属格 | βαθιού | βαθιών | βαθιάς | βαθιών | βαθιού | βαθιών |
動詞組織
アオリスト語幹による、Punctual Aspectのアオリスト未来、アオリスト命令形が発達し、アオリストと同様、頻繁に使用され、コイネーの語幹がそのままの形で現在も存続している。現在語幹は、比較的新しい語形で、現在語幹に嘗てはアオリストの語尾であった、第2次人称語尾が接尾され、未完了過去を形成し、発展させた。
また、希求法は接続法に融合し、代わりに条件法が導入された。
Perfectiveである完了のアスペクトも迂言形で、助動詞exoを使い、haben(have)動詞のように時制変化して迂言形完了形を形成(語幹はアオリスト語幹)する。未来時制は、θαを接頭辞とするアオリスト語幹のアオリスト未来が創造され頻繁に使用される。語幹の相違で現在のアスペクトの未来と峻別される。語尾は第1次人称語尾がともに使用される。過去時制は、先に述べたように、現在語幹に第2次人称語尾を接尾した未完了過去と、アオリスト語幹に第2次人称語尾を接尾したアオリストが対立する。この用法の体系はロマンス語の「半過去と点過去の対立」と類似する。
未来完了、現在完了、過去完了は先にのべたとおり、εχω アオリスト語幹に ειを接尾した複合形が成立する。接続法は、ναを附した迂言形で語幹は現在語幹+第1次人称語尾形(継時相):アオリスト語幹+第1次人称語尾形(瞬時相)である。条件法はθαを附した迂言形で語幹は現在語幹+第2次人称語尾形(継時相):アオリスト語幹+第2次人称語尾形(瞬時相)である。
活用の第1次人称語尾形の基本は、1人称単数:2人称単数:3人称単数:1人称複数:2人称複数:3人称複数の順でそれぞれ、-o(1p/sg),-is(2p/sg),-i(3p/sg),-ume(1p/pl),-ete(2p/ol),-un(3p/pl)
- 「見る」の例:'vlepo,'vlepis,'vlepi,'vlepume,'vlepete,'vlepun
- 母音融合動詞の活用例「愛する」:aγa'po,aγa'pas,aγa'pai,aγa'pame,aγa'pate,aγa'pane
- 「できる(can)」:bo'ro,bo'ris,bo'ri,bo'rume,bo'rite,bo'run
第2次人称形の基本は、-a(1p/sg),es(2p/sg),-e(3p/sg),-ame(1p/pl),-ate(2p/pl),-an(2p/pl)
- IMPERFECTUMの典型例:「書いた」:'eγrafa,'eγrafes,'eγrafe,'γrafame,'γrafate,'eγrafan
- 「踊った」:'xoreva,'xoreves,'xoreve,xo'revame,xo'revate,'xorevan
- 母音融合動詞「愛していた」:aγa'pusa,aγa'puses,aγa'puse,aγa'pusame,aγa'pusate,aγa'pusan である。
動詞活用の基本形
相 | 語幹 | 過ぎ去った(過去)時制 | 現に生じている(現在)時制 | 命令法 | |
---|---|---|---|---|---|
継時相 | γραφ-(書く) | 1.Sg.
| 未完了過去 έγραφα(書き続けていた=仏:j'écrivais) 英:I used to write | 現在形 γράφω(私は書く) 英:I write | 現在相・命令形 英:write! (継時的命令) |
瞬時相 | γραψ- | 1.Sg.
| アオリスト形 έγραψα(書した) 英:I wrote | 接続法アオリスト(従属文中主観表明) να γράψω 英:that I write | アオリスト命令(一回限りの事行の命令) 英:write! |
完了相 | 1.Sg.
| 完了相(「現在完了」) είχα γράψει 英:I had written | 完了形(「書いた」こと[結果]が現在も残存している) έχω γράψει 英:I have written | ||
現在分詞(副詞的/形容詞的なもので同文中の他の人称を有する動詞の「状況」を表現) γράφοντας |
条件法(過去に置かれた未来) | 直説法(現在に置かれた未来) | |
---|---|---|
継時相未来. | θα έγραφα 英:I would write 仏:j'écrirais | θα γράφω 英:I will write (continually) 仏:j'écrirai |
瞬時相未来. | θα έγραψα 英:I have probably written 仏:j'écrirais | θα γράψω 英:I will write (once) 仏:j'écrirai |
未来完了. | θα είχα γράψει 英:I would have written 仏:j'aurais écrit | θα έχω γράψει 英:I will have written 仏:j'aurai écrit |
- 命令形は2人称のみで、第1次人称語尾形の現在相は、-e(2p/sg),-ete(2p/pl)
- 「書き続けよ!」'γrafe,'γrafete
- 命令形のアオリスト相第2次人称語尾形は、-e(2p/sg),-te(2p/pl))
- 「書け!」'γrapse,'γrapste:
γράφομαι('書かれる・相互に書き合う[中・受動態]') | |||
---|---|---|---|
過ぎ去った(過去)時制 | 現に生じている(現在)時制 | 命令法 | |
現在のアスペクト(継時相)(未完了過去)(現在形). | γραφόμουν(書かれ続けていた) γραφόσουν γραφόταν γραφόμαστε γραφόσαστε γράφονταν(ε) | γράφομαι(書かれる・相互に書き合う) γράφεσαι γράφεται γραφόμαστε γράφεστε γράφονται | — — |
アオリストのアスペクト(瞬時相)(アオリスト形)(アオリスト接続法). | γράφτηκα(書かれてしまった[過去の事行の瞬時形]) γράφτηκες γράφτηκε γραφτήκαμε γραφτήκατε γράφτηκαν | να γραφτώ(従属文中で「書かれたこと[瞬時形]...」[従属文中の主観的表明]) να γραφτείς να γραφτεί να γραφτούμε να γραφτείτε να γραφτούν | γράψου(書かれよ!) γραφτείτε |
έχω γραφτεί(私は書かれている[結果が現在も存続している]) |
中・受動態(語尾)は、如上の範例にならい、-ome(1p/sg),-ese(2p/sg),-ete(3p/sg),-omaste(1p/pl),-este(2p/pl),-onde(3p/pl):「書かれていた」γra'fomuna,γra'fosuna,γra'fotane,γra'fomaste,γra'fosatste,γra'fondane:&c...の語尾音で形成される。
- 例「見られている」'vlepome,'vlepese,'vrepete,vle'pomaste,'vlepeste,'vleponde、
- 母音融合動詞「愛されている」aγa'pjeme,aγa'pjese,aγa'pjete,aγa'pjumaste,aγa'pjeste,aγa'pjunde
- 第2次人称語尾形は、如上にならい、-omun/-omuna(1p/sg),-osun/-osuna(2p/sg),-otan/-otane(3p/sg),-omaste(1p/pl),-osaste(2p/pl),-ondan/-ondane(3p/pl)
- 注:中・受動態の命令形の使用は極めて稀である。
その他の文法形態素
人称名詞
- 有強勢形:1人称;Nom/sg; e'γo Acc & Gen/sg; (e)'mena Nom/pl; (e)'mis Acc & Gen/pl;(e)'mas
- 2人称;Nom/sg; e'si Acc & Gen/sg;(e)'sena Nom/pl; (e)'sis Acc & Gen/pl;e'sas
- 無強勢形;1人称;Acc/sg;me Gen/sg;mu Acc & Gen/pl;mas
- 2人称;Acc/sg;se Gen/sg;su Acc & Gen/pl;sas
人称代名詞
- 有強勢形:英語のhe:af'tos she:af'ti it:af'to they (m.pl)af'ti (f.pl)af'tes (n.pl)af'ta
- 無強勢形:Acc:英語のhim:ton her:ti(n) it:to them:(m.pl)tus (f.pl)tis (n.pl)ta
関係代名詞
カサレヴサの、(冠詞)+(代名詞o'pio);o o'opios : i o'pia : to o'pio (数・格・性は先行詞と一致)を用いるのが商業文・行政文・公的文書では普通である。民衆口語体の 無トーノスの pu も口語では用いられるが、どこに係るのか不明なため教養人はこれをもちいない。
前置詞
Dativus の代わりに、se (σε)+ Acc.(標準方言)、もしくは、a'po (από)+ Acc.(北部方言)が用いられる。
- a'na (ανά)+ Acc = の上で、によって(カサレヴサ)
- 'is (εις)+Acc=の中に(カサレヴサ)
- 'anef (άνευ)+Gen=なしに、以外に(カサレヴサ)
- an'di (αντί)+ Gen=代わりに(カサレヴサ)
- 'pro (προ)+ Gen=の前に(カサレヴサ)
- 'δja (δια)+ Acc=のために
- 'δja (δια)+ Gen=を通じて、経由して(カサレヴサ)
- ka'ta (κατά)+ Acc=によって、を通って(カサレヴサ)
- ka'ta (κατά)+ Gen=に対して
- me'ta (μετά)+ Acc=の後に
- me'ta (μετά)+ Gen=とともに
- pe'ri (περί)+ Acc=のまわりで
- pe'ri (περί)+ Gen=に関して
- i'per (υπέρ)+ Acc=の上に
- i'per (υπέρ)+ Gen=のために
- 'pros (προς)+ Acc=に対して、向かって
- 'pros (προς)+ Gen=によって
- 'pros (προς)+ Dat=そのうえ、以外に(カサレヴサ)
- i'po (υπό)+ Acc=の下に
- i'po (υπό)+ Gen=によって(...Gen=(カサレヴサ):受身の実質的主体を表す)(口語は a'po (από)+ Acc.に拠り受身の実質的主体を表す)
- kon'da (κοντά)+ Accまたは((...σε)/(...από))+Acc.=近くに
- me'sa (μεσά)+ Accまたは((...σε)/(...από))+Acc.=内に
- 'ekso (έξω)+ Accまたは((...σε)/(...από))+Acc.=外に
- bro'sta (μπροστά)+ Accまたは((...σε)/(...από))+Acc.=対面に、向かいに
- 'piso (πίσω)+ Accまたは((...σε)/(...από))+Acc.=うしろに、後に
- 'pano (πάνω)+ Accまたは((...σε)/(...από))+Acc.=上に、上部に
(注:口語の前置詞は、全てAcc.支配である)
疑問詞
- 口語では、ti (τί;)(カサレヴサ: tis[τίς])「何、何が、何を」(方言では 'inda が広く用いられる)
- 「誰が」の疑問は、'pjos [Ποιός] (m.) 'pja [Ποιά] (f.) 'pjo(n.) [Ποιό] (カサレヴサにはn[ν]が附される:'pjon[Ποιόν](n.))
- 「いつ」の疑問は、'pote (Πότε;)
- 「どこ」の疑問は、'pu (Πού;)
否定辞:標準語
- δen :北ギリシアのポントス方言系では、/u'ki/(ουκι,ουχι)
語順
固定された語順
- 小辞(前置詞)+(被制辞となる)名詞句。
- 限定詞(冠詞)+名詞。
- (直接目的語の)人称代名詞(人称名詞)+動詞(但し、命令法と分詞の場合は転置)。
- 数詞+名詞群。
- 否定詞+動詞。
- (関係詞・接続詞)+(名詞句または動詞句)。(注:3は方言では転置される)
SVOが基本語順であるも、VSO、OVS(受動的な表現で)、VOS、OSV、SOV(格言の言いまわしにみられる)の全てが可能であり、許容される。
語彙形態素
ほとんどが、コイネーからの承継である。ギリシアの各地における方言に、その残渣がみられる。トルコ語の語彙素もかなりの頻度で用いられることが現代ギリシア語の特徴である。
文法形態素
カサレヴサの文法形態素は、古典ギリシア語と同一または類似(擬古形)である。口語については、上記・下掲を参照されたい。
方言
ツアコニア方言は、迂言法による動詞活用をおこなう。εμι ορου,εσι ορου,ενι ορου,εμμε ορουντε,εττε ορουντε,εισι ορουντε(現在形「見る」の活用(3性変化:ορου,-α,-ντα))。
キプロス方言の文法要覧
- 活用例
- a'kuo(1p/sg/praes),a'kuis(2p/sg/praes),a'kui(3p/sg/praes),a'kumen(1p/pl/praes),a'kuete(2p/pl/praes),a'kusin/a'kun(3p/pl/praes)(聞くの現在形)
- 同中受動態形:IMPERFECTUM
- e'kuumun(1p/sg/praesIMPERFECTUM),e'kuesun(2p/sg/praesIMPERFECTUM),e'kuetun(3p/sg/praesIMPERFECTUM),eku'umastin(1p/pl/praesIMPERFECTUM),e'kuestun(2p/pl/praesIMPERFECTUM),e'kuuntan(3p/pl/praesIMPERFECTUM)(聞いていた)
- 能動態アオリスト:Aoristus
- a'kuso(1p/sg/aor),a'kusis(2p/sg/aor),a'kusi(3p/sg/aor),a'kusumen(1p/pl/pl),a'kusete(2p/pl/aor),a'kusin/a'kusun(3p/pl/aor)
- 能動態第2次人称語尾接尾の未完了過去:IMPERFECTUM
- 'ekua(1p/sg/imperfectum),'ekues(2p/sg/imperfectum),'ekuen(3p/sg/imperfectum),e'kuamen(1p/pl/imperfectum),e'kuete(2p/pl/imperfectum),e'kuasin(3p/pl/imperfectum)
- 「アオリスト」能動態
- (「聞いた」)'ekusa(1p/sg/aoristus),'ekuses(2p/sg/aoristus),'ekusen(3p/sg/aoristus),e'kusamen(1p/pl/aoristus),e'kusete(2p/pl/aoristus),e'kusasin(3p/pl/aoristus)
- 中・受動態 現在形 基本形(第1次人称語尾形)
- a'kuume(1p/sg/praesens),a'kuese(2p/sg/praesens),a'kuete(3p/sg/praesens),aku'umastin(1p/pl/praesens),a'kueste(2p/pl/praesens),a'kuunte(3p/pl/praesens)
命令形:(現在)'aku(2p/sg/praesens),a'kute(2p/pl/praesens):(アオリスト) 'akuse(2p/sg/aoristus),a'kuste(2p/pl/aoristus)
- 語彙形態素(文法形態素)代用語(「誰、何」(pi'os))
- Nominativus;(m.)'pcos (f.)'pca (n.)'inta
- Accusativus;(m.)'pcon (f.)'pcan (n.)'inta
- 人称代名詞
- Sg:Accsativus;(m.)ton (f.)tin (n.)to
- Sg:Genetivus; (m.)tu (f.)tis (n.)tu
- Pl:Accusativus;(m.)tus (f.)tes (n.)ta
- Pl;Genetivus; (m)tus (f.)tus (n.)tus
- 人称名詞
- 有強勢形;1人称;Nom/sg; e'jo(ni) Acc & Gen/sg; e'menan Nom/pl; e'mis Acc & Gen/pl;e'mas
- 2人称;Nom/sg; e'su(ni) Acc & Gen/sg;e'senan Nom/pl; e'sis Acc & Gen/pl;e'sas
- 無強勢形;1人称;Acc/sg;me Gen/sg;mu Acc & Gen/pl;mas
- 2人称;Acc/sg;se Gen/sg;s Acc & Gen/pl;sas
- 南イタリアのギリシア方言
- 破擦音/t∫/、イタリア語と同様の重子音、子音連続の硬口蓋化、連続する子音の同化、喉音の発達、動詞中・受動態の未完了過去3人称単数人称語尾-ενο、アオリスト命令形-σο、アオリスト分詞の存続:-γραφοντας, φονασοντας、不定形の名詞的用法の保持;το κλαφει σου=το κλαμα σου, το απεσαει =το αποθανειν
その他の方言でも、音韻変化において閉鎖音から摩擦音への遷移過程(通時言語学的現象)、前舌化、上昇・閉音化、中音化(centralisation)の現象・シュー(/∫/)音化・/t∬/音化・躁音化・無声軟口蓋閉鎖音の硬口蓋閉鎖音化等さまざまの音韻変化が諸方言に分散し、古代ギリシア語からコイネーの時代を経て現代の各地域の方言・またコイネーからアテネ方言への推移をも通時言語学・共時言語学において論証することができる。
特に如上のキプロス方言、またクレタ方言等は現在も遡及の可能な多量の文献が存在するので、現代語の通時的推移・共時的視野を論証させてくれる。また、母音交替・子音交替・語中音(γ)添加.語尾音(ν)の添加、ふるえ音化等のさまざまな音韻変化または交替現象・古典語からの伝統である音便νの保持など、現代の諸方言は、古典からコイネーを経て分散した各方言の通時・共時言語学上の貴重な音韻変化を現在も維持している。現代の現用言語(langue vivante)である「ギリシア語」は、古代からの継続言語であり、「現用言語のギリシア語」の完全な理解には古典ギリシア語の素養も不可欠である。
表現
かなのあとに「’」があれば、母音がでないように発音するべき、かなのあとに「・」があれば、この音節を強く発音するべき。
- 基本表現:こんにちは=καλημέρα σας カリメ・ラ サス’
- こんばんは(午後の挨拶)=καλησπέρα σας カリス’ぺ・ラ サス’
- お元気ですか=Πώς είστε; ポス’ イ・ス’テ? または Τι κάνετε; ティ カ・ネテ?(; は疑問符)
- はい=μάλιστα マ・リス’タ またはくだけた表現で ναι ネ
- いいえ=Όχι オ・ヒ
- いつ(何時)=πότε; ポ・テ
- どこ(何処)=πού είναι; プ イ・ネ?
- だれ(何人)=(男性形:ποιός;)ピョス’?(女性形:ποιά;)ピャ?
- はい、元気です。で、あなたはいかがですか=Καλά, ευχαριστώ. Και εσείς; カラ・、エフ’カリス’ト・。ケ エシ・ス’?
- ようこそお越しくださいました=καλώς ήρθατε カロ・ス’ イ・ル’サテ
- お目にかかれて恐悦至極です=καλώς σας βρήκα カロ・ス’ サス’ ヴリ・カ または χαίρομαι που σας βλέπω ヘ・ロメ プ サス’ ヴレ・ポ
- どうぞおはいりください=περάστε παρακαλώ ペラ・ス’テ パラカロ・
- どうもありがとうございます=ευχαριστώ πολύ エフ’カリス’ト・ ポリ・
- どういたしまして=παρακαλώ パラカロ・
- ほんとうにすみません=λυπάμαι πολύ リパ・メ ポリ・
- どうなさられたのですか=τι συμβαίνει; ティ シン’ヴェ・ニ?
- なんでもございません=τίποτε ティ・ポテ または τίποτα ティ・ポタ
- ほんとうですか=αλήθεια; アリ・シィァ?
- ちょっと手をかしてくれませんか=μπορείτε να με βοηθήσετε λίγο ; ボリ・テ ナ メ ヴォイティ・シセテ リ・ゴ
- なにをお望みですか=τι θα θέλατε; ティ サ セ・ラテ?
- ちょっと待っていてください=περιμένετε λιγάκι παρακαλώ ペリメ・ネテ リガ・キ パラカロ・ または περιμένετε ένα λέπτο παρακαλώ ペリメ・ネテ エ・ナ レプ’ト・
- お会いできて嬉しい=χαίρω πολύ ヒェ・ロ ポリ・
- 知り合えて嬉しい=χαίρομαι που σας γνωρίζω ヒェ・ロメ ポリ・ プ サス’ グ’ノリ・ゾ
- 楽しいときをすごさせていただきました=περάσαμε ωραία ペラ・サメ ポリ・ オレ・ア
- ごちそうさま<特に決まったギリシア語の言い方はないが>=καλή χώνεψη!<が相当> カリ・ ホ・ネプ’シ
- いつでも来てください=ελάτε όποτε θέλετε エラ・テ オ・ポテ セ・レテ
- おいとまします(ごめんください)=Να με συγχωρείτε ナ メ シンホリ・テ または αντίο σας! アディ・オ サス’
- またお会いしましょう=καλή αντάμωση カリ・ アンダ・モシ
- よい旅をお祈りします=καλό ταξίδι カロ・ タク’シ・ディ
- すみませんここを通してください=παρακαλώ, αφήστε με να περάσω パラカロ・ アフィ・ス’テ メ ナ ペラ・ソ
- 早く医者を呼んでください=καλέστε γρήγορα ένα γιατρό カレ・ス’テ グ’リ・ゴラ エ・ナ イァト’ロ・
- どうしたのですか=τι έχετε; ティ エ・ヘテ?
- 早く良くなってください=ελπίζω να γίνετε καλά σύντομα エル’ピ・ゾ ナ ギ・ネテ カラ・ シ・ンドマ または περαστικά! ペラス’ティカ・
- ここに来てください!=ελάτε εδώ! エラ・テ エド・!
- これはおいくらですか=ποσο κάνει αυτό; ポ・ソ カ・ニ アフ’ト・? または πόσο κοστίζει αυτό; ポ・ソ コス’ティ・ズィ アフ’ト・?
- (我々は)とてもたのしかった=Περάσαμε ωραία! ペラ・サメ オレ・ア!
- (私は)とてもたのしかった=χάρηκα πολύ! ハ・リカ ポリ・!
- 同慶の至りです=συγχαρητήρια! シンハリティ・リア!
- (年に1度のお祝い用の決まり文句)「御誕生日おめでとう:メリークリスマス:新年おめでとう」=Χρόνια Πολλά! フ’ロ・ニャ ポラ・
- 新年おめでとう!=Ευτυχισμένος ο καινούργιος χρόνος! エフ’ティヒズ’メ・ノス オ ケヌ・リョス フ’ロ・ノス!
- 感謝をこめて!(ありがとうを感謝を込めて述べるとき)=Στα δυο χέρια σας! ス’タ ディョ ヘ・リャ サス’!
- 乾杯!=Στην υγειά μας! ス’ティン イヤ・ マス! または形式的表現では Στην υγειά σου! ス’ティン イヤ・ ス!
- 御成功を祈ります=Καλη επιτυχία! カリ・ エピティヒ・ア
- 貴方のおかげです=σας είμαι υπόχρεος サス’ イ・メ イポ・フ’レオス
- 了解(その通り)=Μάλιστα! マ・リス’タ
- 1時にあの場所でお会いしましょう=Θα συναντηθούμε εκεί στη μία! サ シナンティトゥ・メ エキ・ ス’テイ ミ・ア
脚注
- ^ a b Modern Greek, UCLA Language Materials Project: Language Profiles, 2009年1月30日閲覧。
- ^ a b c d "Greek language", Columbia Encyclopedia(オンライン版)、2009年1月30日閲覧。
- ^ "Greek language", Encyclopædia Britannica (オンライン版)、2009年1月30日閲覧。
- ^ 民衆の口語がギリシアの言葉と考え、主としてイオニア諸島の方言から収集し口語民衆語を提唱した。『開放された自由人』を参照。
- ^ 西海沖の地域を除く東域の諸島・北ギリシア本土・小アジアの当時の人々には、現地語とカサレヴサしか解する言語はなく、アテネ方言はまったく通じなかった。
- ^ Robert Browning, Medieval and Modern Greek, Cambridge University Press, 2nd edition, 1983.
関連項目
参考文献
- Albert Thumb, Handbuch der neugriechischen Volkssprache: Grammatik, Texte, Glossar, W. de Gruyter, 1974, ISBN 9783110033403 - 口語民衆語文法・方言を記載した記述文法。
- Robert Browning, Medieval and Modern Greek, Cambridge University Press, 2nd edition, 1983, ISBN 0521299780 - 古代から現代語への発展の歴史を簡潔に記した、優れた文献。
- 関本至『現代ギリシア語文法』泉屋書店、1968年 - 現代ギリシア語ディモティキの規範文法書。
- 関本至『現代ギリシアの言語と文学』渓水社、1987年
- 水谷智洋『古典ギリシア語初歩』岩波書店、1990年、ISBN 9784000008297
- 八木橋正雄「現代ギリシャ語キプロス方言のアウトライン」日本ギリシア語ギリシア文学会『プロピレア』4号、1992年、49–55頁、および11号、1999年、40–46頁 - キプロス方言の文法を記した論文。
- 八木橋正雄『現代ギリシャ語の基礎』大学書林、1984年、ISBN 9784475017626 - カサレヴサとデモティキの比較についても記述し、方言にも配慮した唯一の現代ギリシア語記述文法の日本語文献。
- 八木橋正雄『現代ギリシャ民衆口語ハンドブック』私家版、1992年 - Albert (1974) の日本語訳
外部リンク
- ギリシア語会話集 - ウィキトラベル
- Perseus Digital Library - 英語サイト。膨大な数の古典ギリシア語テキスト、文法書、辞書、画像などを収集。
- Greek language - 英語サイト。オンライン版『ブリタニカ百科事典』に収録されている項目。
- Greek language - 英語サイト。オンライン版『コロンビア百科事典』に収録されている項目。
- Η Πύλη για την ελληνική γλώσσα - ギリシア語サイト。ギリシア語に関する総合ポータルサイト。