アガリクス
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アガリクス(Agaricus)
カワリハラタケ Agaricus subrufescens | |||||||||||||||||||||
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Agaricus subrufescens | |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Agaricus subrufescens[1] Agaricus blazei[2] | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
カワリハラタケ | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Almond mushroom |
カワリハラタケ (Agaricus subrufescens) とはハラタケ属のキノコの一種。アガリクス (Agaricus)、ヒメマツタケの俗称で知られる。信頼できる科学的なデータはないが、免疫賦活作用からがん予防・抗がん作用があるとして、日本ではサプリメントとして広く服用されていた。
ハラタケ属のキノコにはハラタケ、ツクリタケ、シロオオハラタケなどがある。
サプリメントとしてのアガリクスは手軽に手に入る反面、副作用や成分による被害も出ている。最近、製品によっては発がんプロモーター作用を持つ成分が含有されていることがあると報告がされた[5]。
目次 |
分類
Agaricus subrufescens (カワリハラタケ)は、アメリカ合衆国の植物学者Charles Horton Peckによって1893年に初めて言及された[1]。19世紀終りと20世紀初頭の間、ヒメマツタケは食用として合衆国東部で栽培されていた[6]。その後、1970年代にブラジルで「再発見」され、新種と考えられたことから、Agaricus blazei と命名された。Agaricus blazeiには薬理効果があると主張され、ABM (Agaricus blazei Murill)、Cogumelo do Sol(太陽のキノコ)、Cogumelo de Deus(神のキノコ)Cogumelo de Vida(生命のキノコ)、ヒメマツタケ、Royal Sun Agaricus、Mandelpilz、 Almond Mushroomなどの名称ですぐに市販された。
2002年に、DidukhらはA. blazeiではなく、A. brasiliensisと呼称した[3]。しかし、Richard Kerriganによるいくつかの菌種の遺伝的試験や相互生殖能試験の結果[6]、ブラジルで発見されたA. blazeiおよびA. brasiliensisは北米のAgaricus subrufescensと遺伝的に類似しており相互生殖能があることが証明された。また、これらの試験において、ヨーロッパのA. rufotegulis[4]も同種であることが判明した。分類学的には最も古い命名であるA. subrufescensが使われる。
サプリメントとして
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概要
一般にブラジル原産の和名カワリハラタケ(Agaricus blazei Murril)の事をアガリクスと称し、そのキノコを原料とした健康食品として広く販売されている。かつては非常に高価であったが、1990年代に栽培方法が確立され手に入りやすい存在となった。
このキノコはブラジルより種菌が日本に持ち込まれ、1970年代後半から日本で人工栽培され、最初ヒメマツタケとして販売が始まった。その後いくつかの研究機関から抗腫瘍効果(免疫療法)や血糖値降下作用等が報告され、注目が高まった。1990年代中頃より、いわゆるアガリクスブームが始まり、サプリメントとして乾燥キノコや抽出エキス等が販売されるようになり、日本国内で300億円以上とも言われる巨大な市場を形成した。
そして、アガリクスによって「癌が治った!」というような本も多数出版されている。しかし、こうした本の多くはいわゆるバイブル商法で用いられる「バイブル本」であり、問題とすべき点が多い。
原料は子実体と菌糸体のどちらが、抽出方法は酵素処理法と熱水抽出法どちらがいいかなど確実な事はわかっていない。また、アガリクスと称して売られているものの中にはハラタケ属のキノコであってもカワリハラタケでないものも多数流通している(もっともハラタケ属の学名がAgaricusであるので間違った用法ではない)。
また、アガリクス製品によると思われる副作用では重篤な肝機能障害で死亡例も報告されている(厚生労働省の判断では因果関係がはっきりしないとされている)。国立医薬品食品衛生研究所が流通する商品について検査した結果、キリンウェルフーズ社の「キリン細胞壁破砕アガリクス顆粒」について、発ガン作用を助長・促進する作用が認められたため平成18年2月13日、販売停止と回収を求め、同社はそれに応じた。また同社は該当製品に留まらず、アガリクスを含む全製品の販売停止と回収を決定した。なお、該当製品以外に同時に2製品を試験したが、その製品からは癌プロモーター作用は認められていない。
機能
免疫の働きを活発にする可能性がある。結果として癌の発生予防や増殖抑制が期待され、また癌治療に伴う副作用の軽減、免疫賦活作用により薬剤治療の効果の向上が望めると言われる場合がある。また糖尿病や高脂血症の予防作用を持つとも言われている。しかし国立健康・栄養研究所は、免疫の活性化を含め本当に効果があるか判断できるような有効なデータは2007年現在報告されていないとしている。
信頼性
日常生活で摂取される食品と同等のものであり、副作用が起こる可能性やその危険性は低いと言える。それ故、サプリメントとして継続して定期的に摂取する事で予防や改善の効果が期待できる可能性があるが、前項でも述べたとおり効果を判断するのに有効とされるデータは現在のところ無いとされる。また、サプリメントには品質にばらつきがあり一定以上の効果が望めない為、治療としては適さないと言える。
アガリクスの中に癌プロモーターの作用を有する成分が報告されたが、製造会社によって含まれていない製品もあり、今後さらなる発表を待つ状態となっている。
副作用
癌プロモーター作用がある成分を含む製品が報告され回収される騒ぎに至ったが、含有するのは一部の製品であり(厚生労働省で試験した3つのうち、2つには癌プロモーター作用がない事が確認されている。)、全てが危険というわけではないが、因果関係は不明であるものの重篤な副作用の報告もあり、検査報告が出揃った状態でない現在、独自判断を下すのは危険といえる。
脚注
- ^ a b Peck CH. (1893). “Report of the Botanist (1892)”. Annual Report on the New York State Museum of Natural History 46: 85–149.
- ^ Murrill, W.A. (1945). “New Florida fungi”. Q. J. Florida Acad. Sci. 8: 175-198.
- ^ a b Wasser, S. P. Didukh, M. Y. de Amazonas, M. A. L. Nevo, E. Stamets, P. da Eira, A. F. (2002). “Is a Widely Cultivated Culinary-Medicinal Royal Sun Agaricus (the Himematsutake Mushroom) Indeed Agaricus blazei Murrill?”. International Journal of Medicinal Mushrooms 4 (4): 267–290.
- ^ a b Nauta, M. M. (1999). “Notulae ad floram agaricinam Neerlandicam-XXXIII. Notes on Agaricus section Spissicaules”. Persoonia 17: 221–233.
- ^ 厚生労働省医薬食品局食品安全部 (2006-02-13). "アガリクス(カワリハラタケ)を含む製品の安全性に関する 食品安全委員会への食品健康影響評価の依頼について". 2009年12月7日 閲覧。
- ^ a b Kerrigan, RW (2005). “Agaricus subrufescens, a cultivated edible and medicinal mushroom, and its synonyms.”. Mycologia 97 (1): 12–24. DOI: 10.3852/mycologia.97.1.12. PMID 16389952.
関連項目
外部リンク